前回の記事では、植物がフィトンチッドを作り出す理由を紹介しました。今回は、フィトンチッドがいかに人に有益であるかをお伝えします。生活にフィトンチッドを取り入れて、真の意味で豊かな生活を送りましょう。
フィトンチッドの主な効果
自律神経の安定、免疫力の向上、リラックス
フィトンチッドといえば「森林浴」ですね。人は森の香りに触れるだけで、心がリラックスし、気持ちがリフレッシュします。自律神経が安定するため、ストレス、鬱、気だるさ、無力感などにも効果的です。肝機能を改善し、快適な睡眠をもたらす安眠作用もあります。免疫機能が正常になることで、風邪や感染症に罹りにくくなります。
現代はストレス社会です。「長時間労働で過度なストレスがかかる→料理をする時間がなく食生活が荒れる(糖質、酸化した油、白砂糖の摂りすぎ)→睡眠時間が減る→疲れが取れない→免疫力がどんどん落ちる→病気になる」このような悪循環に陥る前に、生活にフィトンチッドを取り入れましょう。
自然療法が進んでいるドイツでは、アロマテラピーが医療の現場で採用されています。日本では民間療法などと呼ばれてしまっていますが、本来は植物を活用した治療こそが「医療」なのです。「薬」という感じがくさかんむりになっているように、植物から作られたものが本物の薬です。
消臭、脱臭
森林の中では、動物の死骸や枯れた木などがあるにもかかわらず、嫌なニオイがしません。これは、フィトンチッドが24時間空気中に漂っており、悪臭があると瞬時に消臭してくれるからです。フィトンチッドは天然の空気清浄機なのです。
植物は好き嫌いがはっきりしています。ニオイに関しても同様で、例えば腐敗臭やアンモニア臭などは、瞬時に消臭します(分解・中和すると言われています)。一方で、草や木の香りは消臭しません。植物は、常にニオイを嗅ぎ分けて、森の空気を浄化しているのです。
化学的に作られた合成香料のニオイは、自然界に存在しない分子構造であるため、植物は分解できません。合成香料は、洗濯洗剤や柔軟剤、消臭剤、芳香剤、殺虫剤など、ドラッグストアで売られている安い商品によく使われていますが、臭いですね。自然の香りを知っている人ほど、合成香料のニオイは「匂い」ではなく「臭い」でしかなく、不快に感じるようです。近年は「香害」として問題になっていますね。
殺菌、抗菌
植物は好きな菌と嫌いな菌がはっきりしています。フィトンチッドは「菌を選んで」殺菌します。だから、植物性の除菌剤(アルコール無添加のもの)を使うと、皮膚の常在菌は残しつつ、病原菌だけを殺菌してくれます。
covid-19の感染対策と称して、自然界の考えからかけ離れた対策が浸透してしまいました。今でもアルコール除菌が当たり前になっていますが、消毒用エタノールはアルコール度数が70〜95%と非常に高く、皮膚に悪影響です。そんな刺激が強いものを小さな子供に吹き付ける行為は、虐待に近いと思います。
仕事の都合で、頻繁に除菌する必要がある人は、アルコール無添加の植物系除菌剤を使いましょう。
防腐、鮮度保持
フィトンチッドは、食品の腐敗防止や鮮度保持にも効果的です。生魚を扱うお寿司屋さんは、フィトンチッドの宝庫! まず、まな板や飯台にはヒノキが使われています。ヒノキにはカンファー、α-ピネン、リモネン、カジノールなどテルペン類の成分が多く含まれており、高い抗菌作用があります。
サワラの葉に含まれているピシフェリン酸は、強い酸化防止作用があり、生魚の腐敗を防ぎます。お寿司に欠かせないワサビには、強力な抗菌成分アリルイソチオシアネートが含まれます。ショウガにはゲラニルアセテート(酢酸ゲラニル)という抗菌成分が含まれています。緑茶にはカテキンが含まれていて、やはり抗菌作用があります。
生魚が好きな日本人は、食中毒から身を守るために、昔から植物の抗菌・防腐作用を活用してきたのですね。
防虫(虫よけ)、防カビ
近年は木造住宅が減少傾向にありますが、木造住宅は虫が寄り付きにくくなります。「ヒバでできた家には、3年間は蚊が入らない」と言われます。青森ヒバにはヒノキチオールという成分が多く含まれており、強力な抗菌性があります。
ヒバ、ヒノキ、スギなどの樹木には多量のフィトンチッドが含まれてお理、シロアリ、ダニ、蚊、カビなどを寄せ付けません。クスノキにはカンファー(樟脳)という防虫・防腐成分が豊富に含まれています。クスノキで作ったタンスには防虫剤は要らないと言われるほどです。
まとめ
いかがでしたか? フィトンチッドがいかに私たちの生活を豊かにしてくれているが理解できたと思います。生活にフィトンチッドを取り入れることで、私たちは健康で快適な暮らしを送れるようになります。
次回は、「フィトンチッドを生活に取り入れる方法」をお伝えします。
参考:「フィトンチッド普及センター」資料(監修:谷田貝光克先生)